May 2003アーカイブ

Skellig

coverDavid Almond
引っ越してきたばかりで、小さな早産で生まれた妹は調子が悪く、入院した。それで、大人たちは余裕が無い。Michaelも不安。学校こそ、今までのところに通ってはいたものの、家の中もまだ、この家が最後の住処となっていた老人が住んでいたときのままで落ち着かない。Michaelの不安な気分がひしひしと伝わってくる中、物語は進んでいく。祈りの気持ちが印象的。文中で頻繁に引用されるのがWilliam Blakeの詩。

1998 ウィットブレッド賞 児童書部門
1998 カーネギー賞

Skelligという名前は作者がアイルランドを訪れたときに見た、スケリグ・マイケル島から名前をとったそうです。ヨーロッパに現存する初期キリスト教修道院のうち、最古のものがこの島にあるそうです。(邦訳のあとがきより)

肩甲骨は翼のなごり
この邦訳の表紙のせいで、なかなか読まなかったのでした。装丁をした人には申し訳ないけれど、この表紙をみて、真っ先に思い出したのが、「風と木の詩」(竹宮恵子のマンガ)でした。それで、「翼のなごり」だし、(突如思い出す、「トーマの心臓」こちらは萩尾望都)少女漫画読みすぎの人としては、そういう系統のお話なのかとばっかり...(ごめんなさ~~~い!)本当はそういうコンテンツは全然無くて、高学年の子どもから読める本です。主人公も10歳ですし。
図書館でも、すっかり、大人の翻訳書コーナーにおいてありました。

cover
William Blakeの詩集
実は、カセットブックで持っていまして、詩集も2回くらい読んでいたのです。それで、この本でWilliam Blakeがでてきたのがとても嬉しかったです。と、もうしましてもやっぱり詩はよくわからない。知らない単語がひとっつもなくても、で、どう感じていいのかがよくわからないんです。それでも、数少ない、自分で購入したフランス語の本も2冊は詩集なので、何故だか詩に憧れがあるようです。

この詩集は、私にはまだなにを意味しているのかよくわからないのですが、おおらかな響きがあります。こういうのが本当にわかるようになるといいんですけれど、そんな日がくるかな?

きっと英国人なら、この詩をやたら引用する人、というと、なんらかのイメージがあるのだろうけどな、と思いつつ...

翻訳夜話

cover村上 春樹 (著), 柴田 元幸 (著)

東京大学の柴田教室と翻訳学校の生徒、さらに6人の中堅翻訳家という、異なる聴衆(参加者)に向けて行った 3回のフォーラムの記録。「夜話」とあるように、話の内容はいずれも肩の凝らない翻訳談義だが、レベルの異なった参加者との質疑応答の形をとっているために、回答内容は自ずから微妙に変奏されており、結果として入門、初級、中上級向けの3部構成の翻訳指南書に仕上がっている。(amazonより)

第3部では、カーヴァーとオースターの短編をとりあげて、「海彦山彦」として、競演が行なわれている。巻末に原文が掲載されているので、まず原文を読んでみてからお2人の競演をよんでみました。もともと、オースターを読んでいるところだったので、この短編目当てに借りた本でしたが、読んでみると、とても面白く、楽しいひと時を過ごせました。

おふたかたの翻訳に対する姿勢は自然体で、共感できます。それでいて、緻密でもありますし、真摯。本当に作品を愛していると感じます。翻訳を目指していなくても、ただ翻訳文学を読んでいる立場、洋書を楽しんでいるだけの立場でも、読む値打ちがありました。

村上春樹さんにとっての翻訳は癒しでもあり、また、模写でもあるようです。

掲載の短編:
Collectors / Raymond Carver (7ページ)
Auggie Wren's Christmas Story / Paul Auster (8ページ)

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